備中高松城落城間近と思われたそのとき、天地を揺るがす大事件が本能寺で巻き起る

本能寺の変と官兵衛の進言

 調停のゆくえ

天正10年(1582年)5月。水攻めで湖のようになった備中高松城の窮状を救うべく、既に吉川元春と小早川隆景の軍勢に加えて、毛利輝元が出陣する事態となりました。
毛利の大将が出るからには信長にも出陣してもらい、雌雄決戦とせねばと秀吉は考え、安土城の信長に援軍要請を行います。

やはり信長本人が遠征してくるとなると、我が軍に勝ち目はないと踏んだのでしょう。輝元は備中高松城の救援を諦め、城主の清水宗治に降伏を進言しました。しかし宗治が徹底抗戦の構えを崩す様子はありません。

事態を打開すべく、毛利家の僧である安国寺恵瓊(あんこくじえけい)と、信長側の官兵衛が双方の窓口となって休戦交渉を開始しました。
しかし秀吉側が出した条件「備中・美作・備後・伯耆・出雲の計5カ国の割譲と宗治の切腹」という厳しさでは、さすがの輝元もすぐには首を縦に振ることができません。領土割譲はともかく、宗治の腹を切らせてはならないとの考えだったのです。

秀吉側の調停案による割譲範囲
▲秀吉側の調停案による割譲範囲

休戦協定はまとまることなく、信長の遠征によって毛利家はもはや全滅するのかと思われていたそのとき、天地を揺るがす大事件が勃発したのです。

 本能寺の変

秀吉から援軍要請を受けた信長は、ちょうど大坂に来ていた徳川家康を接待させていた明智光秀を接待役から外し、援軍への参加を命じました。光秀は一旦坂本城(さかもとじょう・滋賀県大津市)に戻り、その後すぐ亀山城(かめやまじょう・京都府亀岡市)に移って出陣の準備に取り掛かります。

坂本城跡
▲坂本城跡(滋賀県大津市下阪本3)

また、信長も安土城を出発して備中高松城へ向かうべく、まずは途中の京に入り、本能寺(ほんのうじ・京都市中京区)に宿泊しました。信長の嫡男である信忠も京に先に入っており、妙覚寺(みょうかくじ・当時は京都市中京区、現在は上京区に移転)に宿泊。

6月1日、信長は本能寺で茶会を開きます。
その日、亀山城の光秀は自身の兵を信長に謁見させるという名目で1万3,000の兵を率いて上洛。既にこのとき、光秀は謀反を決心しており、洛中に入る桂川を渡ったあたりで「敵は本能寺にあり」と宣誓したと言われています(創作だとする説も)。

翌2日早朝、光秀の軍勢は本能寺を完全に包囲。来襲に気付いた信長は弓で戦おうとしましたが、勝ち目はないと判断。女衆を外へ追い出して籠り、建物に火を放って自刃しました。

本能寺跡
▲本能寺跡(京都市中京区小川通蛸薬師元本能寺町)

光秀による本能寺襲撃の報を聞いた信忠は、現場に駆け付けようとしますが、二条御所(現在の二条城・京都市中京区)に立て籠もることを勧められ、ここに籠城。
その後、来襲した光秀の軍勢と戦いますが、光秀軍は御所を放火し、御所は灰燼と化しました。その際に信忠は自刃しています。

光秀がこのような謀反を突如として起こした理由については、正確なところは判っていません。信長に理不尽な扱いを受けた恨みから、謀反に及んだとする説が一般的ですが、他にもさまざまな説があります。

現在の二条城
▲現在の二条城(京都市中京区二条城町541)

 動揺する秀吉

光秀の謀反により本能寺で信長が自害したとの報は、すぐさま備中高松城攻めの官兵衛の陣に知らされました。2日の朝に起きた京での謀反の報せが、翌日夕刻には備中高松に届けられたのですから、その速さは尋常ではありません。
官兵衛は書状を読んで秀吉に報告。秀吉はあまりに突然の大事件ゆえに愕然としてしまいました。
そして官兵衛は秀吉にこう言ったのです…

決断!

官兵衛は秀吉に何を言った?

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正解 「天下を取るチャンス」

もちろんchanceだなんて英単語を使ったりはしませんでしたが…
「黒田家譜」には「さてもこの世の中は畢竟(ひっきょう)、貴公(きこう)天下の権柄(けんぺい・権力)を取給ふへきとこそ存じ候へ」とあります。「あなた様こそ天下を統一するべきです」という意味です。

続けて官兵衛は説きました。
「光秀は主君を殺害した反逆者だから、天罰から逃れることができません。光秀を討つのは簡単です。その後、生き残っている信長の2人の子息を擁立しましょう。
しかし、2人とも天下を治める器ではありませんから、諸大名は必ず侮るはず。すると、謀反を起こす大名が出てくるので、それを討つのです。そうすればあなた様の威信は強化され、自然と天下の権力が転がり込んでくるでしょう」

官兵衛の発言に秀吉は舌を巻き、恐れ慄いたと言います。
何もかも官兵衛に見透かされている――

官兵衛の洞察力に震える気持ちとなった秀吉。このあと、秀吉と官兵衛の距離はどうなる…!?

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画像引用:wikipedia/ブレイズマン様(http://ja.wikipedia.org/wiki/
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